柊のはっぱは尖ってる

好きなものの、好きなところを、好きなだけ

#14 橋本紡みたいに書いてみたい

こんばんは。今朝ぶりですね!

昔は読書少年でした。そんな中で読み返してる回数がいちばん多くて、原点に帰る気持ちになれるのが、橋本紡先生です。

 

 

最初に読んだのはリバーズ・エンドだったと思います。

電撃文庫から2001年に刊行されてます。もちろん読んだのはもう少し後なのですが。

そこから半分の月がのぼる空を読んで…ですね。

半分の月がのぼる空が、いちばん有名だと思います。

2003年刊行。20年経ってるんだなぁ。

もちろん時代感はその頃のものだけれど、古いなぁと感じることはないです。

メディアミックス化もたくさんされてます。コミカライズ、ドラマCD、ドラマ、映画。全部を追えてるわけではないのでそれぞれを語ることは難しいですが、大筋の話は変わらないです。

なんてことない、風邪の延長線みたいな、長期間ゆっくり寝てさえいればいいような病で入院した主人公・裕一が出会ったのは、心臓に難病を抱える少女・里香。

電撃文庫から刊行されたのが最初ですが、ファンタジーとか、アクションとか、ほぼないです。ちょっとふざけたプロレスシーンはありますが、ほとんど普通の少年少女が出会って、生きていく話。

もちろんドラマチックではあるけれど、たぶん地味な話です。そんな手が届く距離にある物語だからこそ、たくさんの人にも響いている物語なんだと思います。

 

舞台は伊勢です。三重県の、伊勢市

作者の出身地でもあり、他の作品でも舞台になったり、登場人物の出身地だったりします。

ほとんどが病院を舞台にしていますが、それでも飽きさせることなく、6巻+短編集2巻+ビジュアルノベル、原作完結から何年も経ってから実写映画化の際に完全版として書き直されたのがハードカバーで上下巻・それの文庫版では4巻と出ています。

おすすめは電撃文庫版を読んだ上で、完全版は読んでほしいですけれど…完全版だけでも楽しめると思います。

 


自分の一番好きなキャラクターは、小夜子さんです。

小夜子さんは、里香の主治医である夏目の恋人で、里香と同じく心臓に病を抱え、作中開始時点ではすでに亡くなっているキャラクターです。その存在は主治医である夏目に深く影響し、裕一と里香の関係性にも影響していきます。夏目が医師を志していく過去編があるんですが、その話がね…いいんですよ…

ドラマCDが大好きなんですが、キャストは平野綾さんが演じています。ハルヒやルーシィみたいな元気なキャラクターの印象が強いですが、か細く、たおやかな小夜子さんをしっとりと演じているので、見つけるのは大変だと思うんですけど、聞けた際には聞いてみてほしいです。夏目役の小西克幸さんとの掛け合いが泣けます。

ドラマCDが全体的に完成度がすごく高いなあと思います。
キャスティングもいいんですよ。里香の田村ゆかりさん(大好き)もそうですし、裕一や里香を担当している元ヤン看護婦の亜希子さんをゆきのさつきさん。出番は多くないですが、裕一の同級生のみゆきを水橋かおりさんがやられてるのもかなり良いです。

 

聖地巡礼、なんて言葉はもう一般用語化していますが、自分が一番訪れたことのある聖地が伊勢だったりもします。

その話はまた、次の機会に語らせていただきますね。

 

実写映画版は、原作とは違う描写も増えているので、原作をそのまま!みたいなものを求めている方はドラマCDかなあと思います。実写映画もね、忽那汐里さんが演じている里香がとっても里香で、実際に伊勢の景色と一緒に見ることができるのもたまらないですね。

何度も繰り返し見るにつれて、納得できた映画だったなと。

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主題歌・阿部真央さんの『15の言葉』は、原作も踏まえた上で省かれてしまった要素も補ってくれる素晴らしい曲ですよね。

聞くたびにたくさんのセリフやシーンを思い起こしてしまいます。

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ファンタジーなことが起きるわけではなく、人と人との関わりを大切に描く。

それは橋本紡さんの作品で、繰り返し描写されていることです。

 

半分の月と同じくらい大切にしているのが、『流れ星が消えないうちに』ですね。

 

新潮文庫の夏の100冊!みたいな企画によくラインナップされていたので、手に取ったことのある方も多いかもしれないです。

自分も家の本棚に3冊くらい何故かあります、貸して帰ってこないと思ってたのが戻ってきたり、出先でどうしても読みたくなって購入したり。何冊あっても全然困らないくらい、好きです。波瑠さん主演で映画化もされていますね。

恋人・加地を海外の事故で亡くし、その傷が癒えぬまま新しい恋人と生きる奈緒子と、加地の秘密を知っているものの、言い出せないまま奈緒子のそばにいる恋人の巧。不在の加地との少し変わった三角関係と人生の物語。

辛い描写もあるんですけど、だからこそ、前向きになれる、それもガシッと掴んで無理やりって感じではなく、自然に前を向けるような小説なんですよね。自分がどうしたら良いのかわからないようなときに読んでは軌道修正できるような、何度もここに帰ってきているような小説です。

最初に読んだのは中学生くらいだったと思いますが、27歳で読むと、見えてくる景色が全然違うので、それも不思議です。見えてくるものは違うけれど、前を向けるのは変わらないんですよ。

 

他作品も、どれも好きなのであげるとキリがありませんが、思い入れがあるのは『九つの、物語』です。

高校時代に校長先生に推薦されて高校の代表としてビブリオバトルの大会に出場したことがあるんですが、その時はこれを読みました。兄の部屋で兄の小説を読んでいると、死んだ兄が突然帰ってくる。幽霊として帰ってきた兄と、小説を読みながら、ご飯を食べながら、少しだけ不思議な日々を描いた作品です。各章がそれぞれ実際の小説を作中で読んでいる(田山花袋の「布団」や、井伏鱒二の「山椒魚」など、それがタイトルにもなっています)ので、それを踏まえてビブリオバトルすればうまくいくだろうと全部読み挑みましたが、周りは学校で予選を勝ち抜いてきた猛者ばかりで普通に敗退した……のはさておき、橋本紡さんの作品で大事にされている食事の描写もとても美味しそうで、文庫版は作中出てくるトマトスパゲッティのレシピもついてくるのでとてもおすすめ。

 

空色ヒッチハイカー』もいいですね。すごく憧れました。

高校3年生の受験生がお兄ちゃんの後を追って東京から九州まで、兄のふりして無免許運転ヒッチハイクで乗せた杏子ちゃんと一緒に旅をしていくストーリーなんですけど、途中まで国道1号線で進むので地元を通ってるんだなあと思えたり。

 

橋本紡先生は2013年に断筆宣言をしています。そしていまは海外で暮らしており、もう小説は書かれてはいません。

そこに至るまでのところは、正直当時高校生だった自分にはわかるようなわからないようなことで、寂しくて複雑で先生に直接SNSでコメントしたり、返信していただいたりもあったんですが、今となってはもう消えてしまっているので見ることはできません。公平にまとめているサイトが見つけられなかったので、気になる方がいたら探してみてください。

あの頃先生が考えていたような日本になったのか、そうではないのか、難しいところですが、誰かと生きることを大切に思う人は変わらずにいると思います。
それが容易な国ではないことは悲しい事実で、生きやすい国でもないなと、思うところで。

 

こんな風に、断筆をしてから10年経とうが、何年も何年も心を動かし続けるような作品を書く作家さんに憧れて勉強もしましたが、結局いまはただの社会人です。

けれどリスペクトの気持ちは膨らむばかりですね。またいつか、新作が読めたらいいな、なんてことをつい、想像してしまいます。

 

ちなみにですが、自分が書いた小説は影響されていることがモロに出てる文体なので、何作か読んでいただいてから自分のを読んでもらうとすごく面白いと思います。以前ブログで読めるようにしていた卒業制作を今月の間だけ復活させるので、もしお暇な方がいたらぜひ。

では!また明日〜!

明日は今日と関連の深い話題に触れたいと思います。

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